アパート経営は収入を増やすために行うものですが、相続税の節税にも役立ちます。相続税を節税できれば、遺族の税負担を抑えられます。ただし、相続税対策を目的としたアパート経営にはメリットだけではなくデメリットもあるため、両方を理解しておく必要があります。ここでは、アパート経営が相続税対策になる理由やメリット・デメリット、注意点などについて詳しくご紹介します。
アパートを相続する際は、建物と土地に分けて評価し、評価額に応じた相続税を納めます。土地は、時価や公示価格、基準地価、固定資産評価額など、いくつかの評価基準で評価します。相続税を算出する際に用いるのは、路線価と固定資産評価額です。建物の評価は、借家権割合に賃貸割合を乗じて算出します。
土地・建物のどちらも相続税の計算方法が複雑なため、税理士に相談することをおすすめします。ここでは、建物と土地の価値から相続税が決まることだけ押さえておきましょう。
アパート経営は相続税対策の1つとして注目されています。アパートを所有することは資産の増加を意味するため、なぜ相続税対策になるのか疑問に感じる方は多いのではないでしょうか。アパート経営が相続税対策になる理由について、詳しくご紹介します。
相続税は、相続する遺産の価格で決まります。例えば、1,000万円を現金で相続した場合は、1,000万円に対して相続税がかかります。一方、不動産を相続した場合は、不動産の購入金額ではなく不動産としての価値に対して相続税がかかるのです。
不動産の価値は評価額で計算され、購入額よりも安くなるケースがほとんどです。例えば、8,000万円で購入したアパートの評価額が購入額の70%の評価額となった場合、30%分の相続税を節税できます。物件付き土地であれば、さらに評価額が低くなり相続税を大きく節税できるのです。
建物には居住用と投資用があり、アパートは投資用に該当します。投資用の建物の評価額は居住用と比べて評価額が下がりやすく、賃貸物件であればさらに評価額が低くなります。そのため、所有しているアパートを賃貸に切り替えるだけでも相続税の節税効果が高まるのです。
アパートを購入する際にローンを利用した場合、ローン残高を遺産金額にマイナス計上できます。例えば、アパートの評価額が6,000万円、現金2,000万円の場合は合計8,000万円が相続税の計算に組み込まれます。ローン残高が3,000万円あると、8,000万円から差し引いて5,000万円に抑えることができます。
「アパートの評価額と現金の合計額」よりもローン残高の方が高い場合は、遺産金額が相殺されるため、相続税はかかりません。借金を残すと相続した人に迷惑がかかるとの考え方もありますが、アパート経営に成功していればローン返済に苦労することはないでしょう。
アパート経営や相続税の知識がない人物に相続する場合、借金がある時点で相続放棄する恐れがあるので、事前に話しておくことが大切です。
相続税対策としてアパート経営を選択する方は多いものの、メリットだけではなくデメリットもあります。アパート経営をすれば相続税は抑えられますが、損失によって節税効果が相殺されてしまう可能性も否定できません。中には、アパート経営をしなかった方がトータルで見るとプラスになるケースもあります。相続税対策のためにアパート経営をするメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。
アパート経営のメリットは、現金の投入によって相続税を減らせることです。アパートの建設や土地の購入に現金を使用するため、相続金額が減少します。さらに、アパートは購入額ではなく評価額で相続税の計算に組み込まれるため、現金をそのまま相続するよりも相続税を抑えられます。
また、アパート経営では維持管理にも費用がかかるので、より多くの現金を費用に充てることで相続税がさらに減るのです。ただし、無駄に費用をかけるのではなく、アパート経営の収入を増やすことを目的に費用をかけなければ、トータルで見るとマイナスになる恐れがあります。
アパート経営に成功すれば、毎月安定的に収入を得られます。例えば、家賃7万円で10室のアパートが満室の場合の家賃収入は70万円です。1年間、常に満室であれば840万円もの収入を得られます。ローン残高が残っていても、相続人が借金返済に困ることはないでしょう。
利益が増えると遺産金額も増えますが、アパート経営の節税効果を踏まえると差し引きゼロか安くなることが多いです。相続後にも継続的に収益を得られることを踏まえると、やはりアパート経営のメリットは大きいと言えるでしょう。もちろん、アパート経営が必ず成功するとは限らないので、絶対に高い節税効果を得られるとは言い切れません。
また、相続人にもある程度のアパート経営の知識を習得しておいてもらう必要があります。
アパート経営は、所得税や住民税、都市計画税などの節税にも繋がります。アパート経営に必要な支出をより多く経費に計上すれば、所得税と住民税の計算の元になる不動産所得を減らせます。ただし、多くの経費がかかっているのに収入が低い状況はアパート経営に成功しているとは言えません。より多くの経費をかけることではなく、収入を増やすことに注力しましょう。
そうすれば、収入と経費のバランスを適切に保ちつつ、アパート経営の収入を増やすことができます。なお、収入よりも経費が大きくて帳簿上ではマイナスになっていても、実際には利益が出ているケースもあります。
相続税対策を目的にアパート経営をすることにはデメリットもあります。デメリットを無視してアパート経営を始めると、後悔するリスクが高まります。次のデメリットを踏まえて、アパート経営をするかどうかを決めましょう。
アパート経営は、放置すれば収益を得られる投資方法ではありません。入居者の満足度が低下すると早々に退去され、空室率が上がります。空室率が高い状況では、収入よりも支出が上回ってしまい、ローン返済に苦労する恐れがあります。
入念な管理を行うには、金銭的・時間的な負担がかかるため、本業で会社員をしながらアパート経営を行う際は注意が必要です。管理人を雇って管理を任せることも可能ですが、それだけ費用の負担が増加します。アパート経営の収入が多く、経費に余裕がある場合は管理人を雇ってもよいでしょう。しかし、常に良好な経営状況が続くとも限らないので、常に見直しが必要です。
アパート経営では、損失を受ける場合があります。損失が出ても、給与所得と損益通算すれば税負担を抑えられます。しかし、損失が大きすぎると相続税の節税効果が失われる恐れがあります。損失が大きいほどに遺産金額が減るため、相続税を抑えられるのですが、これは相続する資産の減少を意味します。より多くの資産を残したいという目的を果たせなくなる恐れがあるため、アパート経営はできるだけ損失を抑えることが重要です。
アパート経営を始めたものの、「思っている以上に金銭的・時間的な負担が大きくて収支がマイナスになることが多い」、「相続税は減らせそうだがトータルで見るとマイナスになっている」といったことがないよう、十分に検討しましょう。
アパートに入居者がいる状態では、賃貸以外の用途で転用や売却ができません。入居者と締結する賃貸契約では更新日が定められていますが、基本的に自動的に更新されます。こちらから更新させないのは違法のため、入居者が全員退去するまで待つ必要があります。入居者に退去を要求できるのは、重大な契約違反や迷惑行為などが行われた場合のみです。
そのため、アパートを処分したいと思っても、すぐに処分できないことがデメリットと言えます。例えば、「アパートを相続したくないから事前に処分しておいてほしい」と言われた際に、すぐに処分ができません。そのため、相続税対策としてアパート経営をする際は、相続人にその旨を伝えておいた方がよいでしょう。
相続税の節税が目的にアパート経営をすると、さまざまなトラブルに繋がる恐れがあります。次の注意点を押さえておきましょう。
アパート経営で損失が出ると、相続税の節税効果が高まります。そのため、損失が出ても楽観視して対策をしない方も少なくありません。しかし、節税効果には限界があるので、あまりにも大きい損失は避ける必要があります。
だからといって利益を追い求めると課税所得が上がります。利益を増やしすぎず、損失をある程度に留めることが大切です。毎月の収入と支出を細かくチェックして、現状を常に把握しておくことが重要です。
借入額が多くなればなるほどに節税効果は高まります。しかし、月々の返済額も大きくなるので、空室が目立つようでは返済が苦しくなるでしょう。利息しか返済できず、いつまで経っても元金が減らない事態に陥る恐れもあります。多額の借り入れをして、相続後すぐにアパートを売却する方法もありますが、利益がでない可能性が高いのでおすすめできません。また、入居者が全員退去するまでは売却もできない点にも注意が必要です。
このように、借入金は節税に繋がるものの借金に変わりはないことを覚えておきましょう。
相続税対策を目的とする場合、アパートにこだわる必要はありません。マンションでも節税対策になります。それでは、なぜ相続税対策にアパート経営がおすすめなのか詳しくご紹介します。
マンションはアクセスが良い都市部での需要が高いのですが、アパートは郊外でも一定の需要が見込めます。もちろん、駅から遠すぎる、周辺環境が悪い、治安が悪いなど、問題が多くなればなるほどに需要が低くなります。しかし、同じ条件でマンションを建てた場合と比べると、アパートの方が安定的に経営できるでしょう。
閑静な住宅街のアパートを好む人、できるだけ家賃を抑えたい人などに人気です。そのため、郊外の中でも閑静な住宅街以外の土地にアパートを建てたり、家賃を相場よりも高く設定したりすると、アパートでも十分な収入を見込めません。自身が持つ土地にアパートを建てるべきかどうかは、専門家に相談して決めた方がよいでしょう。
アパートはマンションよりも低層であり、木造や軽量鉄骨造であることが一般的です。そのため、マンションと比べて低コストで建てることができます。相続税対策を目的に不動産経営を始めたいが資金が足りない、ローン審査に通らないといった場合でも、アパート経営であれば始めやすいでしょう。
また、初期投資が低ければ、同じ家賃収入を得た場合の実質利回りがマンションよりもアパートの方が高くなります。それだけ早く借入金を返済できるので、相続人の負担を抑えられます。もちろん、実質利回りは常に一定なわけではないので、可能な限り利回りが良い状態を維持するために、適切にアパート経営をすることが重要です。
相続税対策としてアパート経営は効果的ですが、メリットとデメリットがあります。デメリットをメリットが上回るのであれば、アパート経営を始めてみてはいかがでしょうか。節税に気を取られすぎると、トータルで見てマイナスになる恐れがある点には注意が必要です。
日興トラストは1971年の創業以来、広島県東広島市の皆さまに貢献すべく、アパート経営を含めた土地活用のアドバイスを行ってまいりました。土地活用の専門スタッフが在籍しておりますので、幅広い知見と豊富な経験に基づいた的確なアドバイスを行えます。相続税対策として不動産投資を始めたいが自分に合った方法がわからない、不動産投資の知識がなくて困っているという方もお気軽にご相談ください。
前職は新潟県の独立リーグのチームでマネージャーをしていました。
私生活では子供と遊ぶこと、野球とサッカーを観ることが日々の楽しみです!
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