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空き家の活用方法

2021.06.25

空き家の活用方法とは?メリット・デメリット・注意点・相談先を解説

総務省の「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要」によると、2018年時点における全国の空き家の戸数は846万件(総住宅数の13.6%)です。これは、10件に約1.4件は空き家であることを意味します。2021年現在の調査データはありませんが、2013年~2018年までの5年で26万戸も増えていることから、現在も増加傾向あることが想定できます。
空き家を保有している限り、毎年固定資産税がかかり続けるため、空き家の活用を検討してみてはいかがでしょうか。ここでは、空き家の活用方法の種類とそれぞれのメリット・デメリット、知っておきたい補助金制度、相談先まで詳しくご紹介します。

空き家を放置するリスク

空き家を放置することには、次のようなリスクを伴います。

周辺住民に迷惑がかかる

空き家を定期的に清掃・メンテナンスしなければ、ホコリやチリゴミが溜まって荒れてしまいます。また、雨漏りで木の板が腐って穴が開き、害虫・害獣が侵入する可能性もあります。そうなれば、糞尿が溜まって悪臭の原因となり、周辺住民に迷惑がかかるでしょう。また、壁や屋根が朽ちることで景観が害されたり、治安が悪くなったりする場合もあります。

このような場合、責任の所在は空き家の所有者にあるため、損害賠償請求をされて予期せぬ損失を被る恐れがあるのです。

犯罪に利用される

放置された空き家には人が尋ねてこないので、犯罪に利用されるリスクが高まります。もし、犯罪者が捕まって警察の捜査が空き家にまで及んだ場合は、その所有者も共犯ではないかと疑われます。また、日頃の鬱憤を晴らすために放火されて、延焼によって周辺住民の家まで燃えてしまう事態も起こりかねません。

固定資産税が高くなる

住宅用地に建物があると、固定資産税や都市計画税が大幅に軽減されます。しかし、放置した空き家に関しては、周辺住民に危険が及ぶ可能性がある「特定空き家」に指定されることで、税制の優遇を受けられなくなります。

その結果、固定資産税が現在の6倍、都市計画税が3倍も増額され、税負担が大きくなるのです。また、特定空き家を放置すると、自治体が強制的に取り壊し、解体にかかった費用を所有者に請求する場合があります。これらは、空き家対策として策定された「空き家対策特別措置法」に基づく措置ですので、回避することはできません。

空き家を利用して収益を得る方法

空き家問題を解決する方法は、活用・売却のいずれかです。売却は、空き家を売却した際にまとまった現金を受け取れますが、それ以降は一切金銭を受け取れません。一方で、空き家を活用する場合は、継続的に収益を得ることができます。空き家を資産として活用したい方は、ここで紹介する空き家の活用方法をぜひ参考にしてみてください。

居住用として貸し出す

空き家を居住用として貸し出す場合、空き家の築年数やメンテナンス状況などに問題がないことが前提です。ただし、近年では古民家が一部の層に高い人気があるため、築年数が経過していてもデザイン次第では借り手が早期に見つかるでしょう。

居住用として貸し出すことが現実的に可能かどうかは、不動産会社に相談することをおすすめします。築年数やメンテナンス状況によっては、家賃を低く設定することになります。

メリット

  • 家賃収入を得られる
  • 家賃収入を維持管理費に充てられる
  • 初期費用を抑えられる

デメリット

  • 借り手がつかないリスクがある
  • 借り手がつかなくても維持管理にコストがかかる
  • 借り手が信頼できる人物かどうか見極めが必要

事業者に貸し出す

空き家を自ら事業に利用するのも1つの方法です。古民家や倉庫、民泊、シェアハウスなどは一定の需要が見込めます。ただし、民泊のような宿泊施設は旅館業法に則り、都道府県知事への届け出が必要です。

メリット

  • 成功すれば収益が安定する
  • 収益を維持管理に充てられる

デメリット

  • 経営のノウハウが必要
  • 競合が強い場合は収益を得られない恐れがある
  • リフォームが必要な場合がある

空き家をリフォーム・建て替えて貸す

空き家をそのまま貸すのではなく、リフォームや建て替えをして売る方法もあります。空き家の築年数によっては、家賃を相場よりも安く設定しなければ借り手が見つかりません。一方で、リフォームして家賃を標準か高めに設定した方が借り手が早く見つかる場合があります。ただし、初期費用が数百万円ほど必要になるため、リフォームした方がよいかどうかはケースバイケースです。

また、新築に建て替えて貸すのも1つの方法です。解体と新築に多くの費用がかかりますが、リフォームするケースと比べて家賃収入を多く得られる可能性があります。また、建て替えるのであれば、民泊やシェアハウスを経営したい事業者に貸し出すのもよいでしょう。

メリット

  • より多くの家賃収入を得られる
  • 家賃収入が安定しやすい

デメリット

  • 多額の初期費用がかかる
  • 競合が強い場合は建て替えても収益が安定しない恐れがある

空き家を売却する

空き家を活用して継続的に収益を得たいと思わない方、自分の代で空き家問題を解消してしまいたい方は、空き家を売却するのがおすすめです。売却益を得た後は、一切の収益を得ることができなくなりますが、引き渡しが完了した時点で空き家問題から解放されます。

空き家を売却するときは、不動産会社に仲介を依頼することが一般的ですが、売却に成功した際は仲介手数料を支払うことになります。仲介手数料を支払いたくない場合は、空き家バンクの利用を検討しましょう。

空き家バンクとは、空き家の賃貸や売却を希望する人と空き家を借りたい人・買いたい人をマッチングする制度です。各都道府県に空き家バンクがあり、市に相談することで利用できます。空き家バンクはあくまでも所有者と購入・利用希望者をマッチングする仕組みであり、売買契約書の作成や引き渡しなどは自分たちで行う必要があります。

メリット

  • まとまった収益を得られる
  • 空き家問題から解放される

デメリット

  • 買い手が見つかるまでに時間がかかる場合がある
  • 立地によってはいつまで経っても売れない
  • 継続的に収益を得ることはできない
  • 空き家バンクを利用する場合は諸手続や契約は自分で行うことになる

空き家を解体して土地を活用する

空き家が老朽化しており、修繕に新築同様のコストがかかる場合には、解体して土地を活用するのがおすすめです。更地にすれば、新たにマンション・アパート・一戸建て・オフィスビルなどを建てて賃貸することで家賃収入を得られます。車通りが多い道沿いにある場合は、コンビニやアパレル店、飲食店など用に土地を貸すのもよいでしょう。そのほか、月極駐車場や時間貸しパーキングを運営する方法もあります。

このように、土地は空き家よりも活用方法が豊富なため、空き家の活用が難しい場合は思い切って解体することを検討してみてください。

メリット

  • 選択肢が豊富
  • より多くの収益を得られる
  • 収益の安定性が高い

デメリット

  • 解体に費用がかかる
  • アパートやマンションを建てる場合は多額の初期費用が必要
  • 立地によっては借り手が見つかるまでに時間がかかる

空き家を活用するときの注意点

空き家の活用を検討する際は、次のことに注意が必要です。

初期費用がかかる

空き家のリフォームや建て替え、解体する際は費用がかかります。建て替える場合は2,000万円以上もの資金が必要になるケースもあります。即金で支払えない場合はローンを組むことになりますが、収入と支出の状況によっては生活に大きな影響を及ぼすでしょう。

ローンを組む余裕はあるのか、空き家活用による収益でどの程度カバーできるのかを考えた上で、空き家活用の種類を選んでください。

先に修繕しない

リフォームや建て替えによって借り手が見つかりやすくなりますが、必ず見つかるわけではありません。借り手が長期にわたり見つからない場合は、リフォームや建て替えにかかった費用が無駄になります。また、借り手が見つかるまでの間も継続的に管理しなければ、建物の品質を維持できません。

借り手の事情に合わせてリフォームや建て替えをすることで、コストが無駄になる事態を防げます。

空き家を活用するときに知っておきたい優遇税制

空き家を活用する際は、優遇税制について確認しておきましょう。相続した空き家を売却した際は、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」が適用されます。空き家の売却によって得た金額から諸費用などを差し引き、譲渡所得を算出します。この特例が適用されると、譲渡所得から最高3,000万円まで控除され、所得税を軽減できるのです。

特例の適用には条件があるため、相続した空き家を売却する際は不動産会社や税理士などに特例を適用できるかどうか確認しましょう。

空き家活用に関する補助金の一例

都道府県は、空き家問題を解消する施策の一環として、空き家にまつわる補助金制度を策定しています。補助金制度の適用条件や内容は都道府県で大きく異なるため、空き家がある地域の自治体に確認してみてください。ここでは、広島市の空き家活用に関する補助金の一例をご紹介します。

住宅団地における住替え促進事業(広島市子育て世帯住替え促進リフォーム費補助)

住宅団地の町内会など自治組織が子育て世帯の住み替えの促進を目的に、空き家をリフォームする際の工事費用を助成する制度です。補助金を受け取れるのはリフォームを行う空き家の所有者、あるいは入居する子育て世帯です。助成額はリフォーム工事の費用の2分1かつ50万円以下となっています。

“まるごと元気”地域コミュニティ活性化補助(空き家等を活用した住民間の交流拠点づくり)

自治会や町内会、地区社会福祉協議会などが空き家をリフォームしたり備品を備えたりして地域住民の交流の場となる拠点を作る際に、リフォーム費用や家財道具の処分費用、備品の購入費用などを50万円まで助成する制度です。

中山間地における中小企業の人材確保支援事業(空き家を活用した社宅の整備費、家財道具等処分費補助)

振興山村地域、あるいは離島振興対策地域にて、空き家を借り受けた中小企業者が従業員の社宅として回収する際にかかる経費の一部を助成する制度です。空き家に残置されている家財道具の運搬および処分にかかる費用を50万円まで(補助率3分の2)、社宅整備にかかった費用を500万円まで助成します。

空き家の処分・活用に迷ったときの相談先

空き家を活用すべきか、売却すべきか迷った際は、次の機関・業者に相談しましょう。

行政

自治体によっては、空き家対策の一環として空き家の活用や処分について相談できる場を設けています。例えば、広島市では空き家の発生の抑制および適正な管理の促進を目的として、各分野の専門家(弁護士・司法書士・建築士・不動産専門家)による相談会を開催しています。

このような相談会は事前予約制であることが多いので、自治体に予約方法とあわせて確認を取りましょう。

不動産会社

不動産会社は、賃貸住宅や購入用の住宅などの仲介業務を行っています。空き家の活用を提案できる不動産会社もあるので、まずは身近な会社に相談してみてはいかがでしょうか。信頼できる不動産会社に相談すれば、空き家を活用すべきか売却すべきか、空き家の築年数や立地、競合、社会情勢、所有者の考え方など、様々な要素を踏まえて客観的な視点でアドバイスしてくれます。

ただし、土地活用の専門スタッフが在籍していることが必須条件です。ちなみに日興トラストにも土地活用の専門スタッフが在籍しておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

士業専門家

空き家を放置すると、害虫や害獣などの問題によって周辺住民に迷惑がかかり、損害賠償請求をされる恐れがあります。所有者としての責任を問われる事態を避けるために、後見人の選任や相続に関する相談などを行うことが大切です。このような法的な問題は弁護士に相談しましょう。

また、土地活用によって収益を得た際に発生する税金や、空き家関連の税制の優遇による控除に関する内容などは、税理士に相談してください。

まとめ空き家の活用方法のメリット・デメリット・注意点・相談先について

土地活用の種類は豊富で、それぞれにメリットとデメリットがあります。広い土地を持つ場合は、それだけ選択肢が広がります。土地活用における収益性や安定性は、立地や面積などで変わるため、不動産会社などの専門業者に相談した上で土地活用の方法を選ぶことが大切です。

コラムニスト川原 正樹

㈱日興トラストの川原です。 日々、お客様の大切な土地の有効活用が出来るように頭を回転させております。

私生活では、空手の稽古もしくは海に出てSUPをしながら自然と戯れております。

人生一度きりですので仕事も遊びも本気で取り組み有意義なものにしたいです。