店舗兼住宅とは、1つの建物内に店舗部分と住宅部分がある物件のことです。住宅部分は必ずしも自宅である必要はなく、賃貸とすることも可能です。店舗兼住宅を建てる際は、生活や店舗運営において不便を感じないように、各種ポイントを押さえてプランニングする必要があります。
また、土地活用を目的に店舗兼住宅を建築し、自宅部分を貸し出すことを検討している場合も同様です。
本記事では、店舗兼住宅の特徴やメリット・デメリット、成功のポイント、税金の知識などについて詳しく解説します。
店舗兼住宅とは、1つの建物の中に店舗部分と住居部分が存在する物件のことです。
例えば、一軒家の1階が飲食店や美容院、小売店などの商業施設で、2階以上がオーナーの住宅として使用します。反対に、1階が住宅として使用され、2階以上を事務所やクリニック、サロンなどの商業スペースとして計画することもあります。
店舗兼住宅には、どのようなパターンがあるのか詳しく見ていきましょう。
このタイプの店舗兼住宅は、1階が商業スペースとして使用され、2階以上が住宅スペースとして使われる形態です。商店やオフィス、レストラン、美容院などが1階に入り、住宅部分はオーナーの住居として利用されます。
住宅スペースはプライベート空間のため、店舗とは別の入り口を設けることが大切です。
このタイプの店舗兼住宅は、1階が商業スペースで、2階以上が賃貸住宅として他のテナントに貸し出される形態です。例えば、1階が飲食店や小売店で、2階以上をアパートやオフィススペースとして貸し出します。
このタイプの店舗兼住宅は、1階がオーナーの自宅で、2階以上が商業スペースとして店舗やオフィスが入る形態です。例えば、1階が住宅であり、2階にクリニックやサロン、事務所などが入ります。
このタイプの店舗兼住宅は、1階が賃貸住宅として他の入居者に貸し出され、2階以上が商業スペースの形態です。例えば、1階がアパートやシェアハウスで、2階以上にレストランやカフェが入ります。
オーナーの自宅の場合は、考え方次第では店舗部分と自宅部分の入り口を共通にできますが、賃貸住宅と商業スペースの組み合わせの場合は別々の入り口を設置した方がよいでしょう。
店舗兼住宅にはメリット・デメリットがあります。まずは、メリットから詳しく見ていきましょう。
オーナーが居住しながら店舗部分を他者に貸し出す、または住宅部分と店舗部分の両方を貸し出すことで家賃収入を得られます。店舗部分は事業に活用されるため、賃料相場が通常の賃貸と比べて高い傾向があります。また、事業用賃貸は一般的に長期契約が多いため、安定した収入が期待できるでしょう。
店舗兼住宅を投資用としてではなく、自身が店舗を持つために使用する場合は、別で店舗を借りて家賃を支払う必要がないことがメリットです。
店舗兼住宅は、商業店舗と住居が一体となった建物であり、店主が自宅として住みながら店舗経営ができます。この場合、店主が店舗の家賃を自宅とは別で支払う必要はありません。
店舗を自身が運営する場合、店舗兼住宅を選ぶことで通勤時間がほぼなくなります。通勤の負担を大きく軽減できるでしょう。ただし、自宅と仕事場が同じ建物内にあるため、仕事とプライベートの境界が曖昧になることも考えられます。
店舗兼住宅を建てる際は、低金利の住宅ローンを利用できる可能性があります。詳しくは後述しますが、いくつかの条件を満たす必要があることに注意が必要です。
住宅ローンは不動産を担保にすることで金融機関にとって貸倒れリスクが低いため、それだけ低金利に設定されています。
店舗兼住宅を建てる際は、建築費用の一部を経費として計上できます。これは、1つの建物の中に店舗と住宅の両方が含まれているためです。ただし、経費に計上できるのは店舗部分の建築費のみであり、住宅部分は事業と関係がないため経費に計上できません。
建築費用の一部を経費として計上する際には、税務上の法律や規則を遵守する必要があります。店舗の内装や設備、給湯設備、エアコンなど、店舗運営に必要な設備や改修費用が経費も経費に計上できるでしょう。計上できる費用に関しては信頼できる税理士に相談し、事前に確認しておくことが大切です。
店舗兼住宅は、オフィス物件や一般の住宅物件と比べて利回りが高い傾向にあります。利回りとは、不動産の投資収益を示す指標であり、投資した資金に対してどれだけの利益が得られるかを示します。
店舗部分は賃貸収入が見込めるため、毎月定期的に収入を得られます。一方、住宅部分は自己居住の場合は収入を得られませんが、賃貸として貸し出す場合は家賃収入を受け取ることができます。このように、店舗と住宅の両方において家賃収入を得られることが店舗兼住宅の利回りが高い理由です。
住宅ローンを利用して店舗兼住宅を建てる場合、住宅部分の床面積が全体の2分の1以上であることと、店舗部分が自己使用であることを満たせば、住宅ローンだけで資金調達が可能になる場合があります。ただし、一部の金融機関でしか対応していません。
そのため、住宅部分は住宅ローン、店舗部分は事業用ローンの形で借り入れることが一般的です。
住宅ローンの方が税率や返済期間においてメリットが多いため、なるべく住宅ローンだけで資金調達したいところでしょう。
続いて、店舗兼住宅のデメリットについて詳しく見ていきましょう。
店舗兼住宅を建てる場合、建築費用が一般の住宅よりも高くなる傾向があります。これは、店舗スペースと住居スペースの両方を考慮することで、建物の設計や施工が複雑化するためです。
一般の住宅では、主に住居スペースを考慮して設計されるため、トイレや水道、壁、電気などの設置箇所や数は比較的シンプルです。しかし、店舗兼住宅では、店舗部分にも陳列棚、カウンター、レジ、ショーウィンドウなどが必要となります。
そのため、店舗兼住宅の建築には多くの専門知識と設計が必要であり、それに伴って建築費用が増えてしまうことがあります。
店舗兼住宅は特殊な構造のため、一般住宅と比べてニーズが限られています。特定の業種や用途に合わせた仕様になっていることが多く、業種が合わないと買い手がつきにくいでしょう。また、業種によって適した立地が異なることにも注意が必要です。
例えば、訪問看護ステーションは駅から必ずしも近い方がよいとは限りません。駅から多少遠くても賃料を抑えたい場合もあります。
店舗兼住宅では、店舗と自宅が同じ建物内にあるため、仕事とプライベートの境界が曖昧になり、メリハリをつけることが難しくなることがあります。
仕事の気持ちを切り替えることが難しいために、ストレスを感じたりプライベートの時間を確保することが難しくなったりすることもあるでしょう。
店舗兼住宅を貸し出す場合、借り手が退去して空室になる期間が必ず訪れます。
特定の業種やビジネスに特化している場合が多いため、次の借り手を見つけることが一般住宅よりも難しいこともあるでしょう。
空室になると店舗部分の家賃収入がゼロになるため、空室リスクを考慮して店舗兼住宅を建てるべきかどうか検討することが大切です。
建物を建築できる「用途地域」には、住居、商業、工業などの種類があり、各エリアに建築できる建物の種類や用途を定めたルールが存在します。特に住宅地では、店舗を建てることに対して制約があることが多いため、店舗兼住宅を検討している方は確認が必要です。
「第一種低層住居専用地域」と呼ばれるエリアでは、原則として店舗の建築は認められていません。ただし、一部の例外として、特定の要件を満たす「住宅に付随する店舗・事務所等」は建築できます。
さらに、地区計画や建築協定によっても、店舗の建築が制限されている場合があります。そのため、店舗兼住宅を検討する際は、最初に法的に建築が可能かどうかの確認が必要です。
店舗で食品を扱う場合は、においや害虫の対策が必要です。生ゴミのにおいが自宅部分に漂ってくる可能性や、害虫が発生しやすいという点に注意しましょう。
店舗と住宅の間に仕切りを設けることで、においや害虫の侵入を防ぐことができます。また、換気を工夫することで、においを適切に排出できるように計画することが大事です。
店舗兼住宅は、床面積や用途地域の制約により、間取りの自由度が低くなる可能性があります。必然的に、どちらか一方のスペースを犠牲にして、もう一方のスペースを優先させることになるでしょう。
例えば、店舗スペースを広く取りたい場合は、住宅スペースを狭くしなければなりません。反対に、住宅スペースを広く取りたい場合は、店舗スペースを狭くする必要があります。
間取りやレイアウトを希望通りに実現できない可能性があることに注意しましょう。
店舗兼住宅を建てて良かったと思えるためには、立地や構造などを適切にプランニングする必要があります。店舗兼住宅で店舗運営をしようと考えている方、土地活用を目的に店舗兼住宅を建てて貸し出そうと考えている方は、次のポイントを押さえましょう。
店舗兼住宅を建てる場合、ビジネスに適している立地を選ぶ必要があります。ただし、その立地が必ずしも自宅に適しているとは限りません。また、住宅部分を賃貸として貸し出す場合は、また別の条件が関わってきます。
例えば、ビジネスに適した立地が「駅から多少遠くても、近くにターゲットが多い場所」とします。このとき、自宅として使う場合は駅から近い方が良い場合もあるでしょう。また、賃貸として貸し出す場合は、大学へのアクセスが良い場所、オフィス街が近い場所など、また別の条件の立地が適しています。
これらのバランスを考慮して、立地を選ぶことが重要です。余っている土地を活用する目的で店舗兼住宅を建てることを検討する場合は、その立地だとどのような人物・業種にニーズがあるのかを考えましょう。土地活用の専門家と相談しつつ、ベストな方針を立てることが大切です。
住居部分と店舗部分は目的や使用方法が異なるため、それぞれに適した間取りを入念に考える必要があります。
自宅として使う場合は、家族が快適に暮らせるように、家族の意見を取り入れて理想の間取りを考えましょう。寝室の配置やリビングルームの広さ、キッチンの使い勝手など、家族の生活スタイルに合った間取りを検討することが大切です。
店舗部分は、収益を上げることを目標に間取りを考えましょう。陳列棚や商品の配置、接客スペースやレジカウンターの位置、店内の動線など、効率的かつ収益性の高い店舗レイアウトを検討します。また、従業員が快適に仕事できるように、作業スペースや休憩室の配置にも配慮しましょう。
さらに、店舗部分の入り口を家族が使用する入り口と分ける、店舗部分を別の階に配置するなどの工夫も必要です。これにより、仕事とプライベートのメリハリがつき、ワークライフバランスを保ちやすくなるでしょう。
店舗が1階にあることで、店舗の存在が歩行者に伝わりやすくなります。また、重い荷物を持っている人や、高齢者、車椅子の方など、移動が難しい人もスムーズに入店できるでしょう。ただし、特定の職種や業態によっては2階を店舗にした方がよい場合もあります。
例えば、隠れ家的な雰囲気が売りの店舗は、道路から見えづらい2階部分の方が適しているでしょう。また、店舗を1階にすることは、騒音による2階以上の自宅や賃貸に住む人の生活への影響を抑えることにつながります。
店舗兼住宅を建てる際は、税金について確認が必要です。税金の種類や軽減措置などについて詳しく見ていきましょう。
住宅の場合は、固定資産税の軽減措置を受けることができます。店舗兼住宅において住宅用地の軽減措置が適用される条件は、自宅部分の面積が全体の2分の1以上であることです。
住宅部分の面積が2分の1未満の場合は、固定資産税の減税措置が適用されないため、税金負担が高くなる点に注意が必要です。自宅部分の面積を2分の1以上にすることで、住宅用地の軽減措置を受けることができ、固定資産税評価額が6分の1(200㎡を超える際は3分の1)となります。
これらを踏まえて、住宅部分と店舗部分の面積の配分を決めることが重要です。
店舗事業で生じた費用は、経費として計上できます。経費として計上することで課税所得が減るため、所得税や住民税の節税効果を得られます。
経費に計上できる費用には、建物や設備の減価償却費、固定資産税、水道光熱費、通信費、火災保険料などがあります。ただし、全額を経費に計上できるわけではなく、事業に用いる割合で按分します。
住宅ローン控除は、年末時点における住宅ローン残高の一定割合が最長13年にわたり所得控除される制度です。店舗兼住宅の場合は、すべての場合において住宅ローン控除を受けられるわけではありません。居住用割合が50%以上の場合に限り、住宅ローン控除が適用されます。
また、店舗兼住宅の場合は、住宅ローン控除額を計算する際に居住用割合を考慮しなければなりません。居住用割合が大きくなればなるほどに、住宅ローン控除額が高くなります。
余っている土地に店舗兼住宅を建て、店舗と住宅のどちらも貸し出すことで、高い利回りが期待できます。ただし、店舗兼住宅にはメリット・デメリットがあるため、自身に適しているかどうか慎重に見極めなければなりません。
まずは、土地活用の専門家に相談することをおすすめします。広島県に本社を置く日興トラストには、土地活用の専門家が在籍しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
㈱日興トラストの川原です。
日々、お客様の大切な土地の有効活用が出来るように頭を回転させております。
私生活では、空手の稽古もしくは海に出てSUPをしながら自然と戯れております。
人生一度きりですので仕事も遊びも本気で取り組み有意義なものにしたいです。